ホーム > はるみの「ちょっとひと言」 > No.09 萱野茂先生
萱野茂先生がお亡くなりになりました。
一昨年の秋、平取町を訪問した際に初めてお会いしたのですが、外見以上にとても大きな人というのが私の第一印象でした。その優しいきれいな目で、ゆっくりとお話されるお姿に、なにか大地が静かに語りかけてくれるような錯覚を覚えました。
先生からは多くのことを学ばせていただきました。アイヌの人々の鮭に対する思い、アイヌ語でシペ「本当の魚」あるいはカムイチェプ「神の魚」と呼ばれ特別な意味を持っているということ、お話の後、ご自宅に隣接する二部谷アイヌ資料館で、実に60匹もの鮭の皮で作った着物も拝見させていただきました。
そして、先生が特に熱心に語られたのは、アイヌの人々が、長い間、自然との共生を何より大切にしながら暮らしてきたということでした。
自然の法則に従い、その恵みを絶やさない知恵と愛情を持っていたということです。
北海道、そして日本の宝である知床の自然環境も、そうしたアイヌの人々の自然への思いが、今も多くの人々に受け継がれ、あのようなすばらしい自然環境として残されているのだと思いました。
教えていただかなければならないことは、まだまだたくさんありました。フチ(お婆ちゃん)が語ってくれて古い歴史や物語をもっともっとお聞きしたかったのに、今となってはそれもかないません。
でも、先生の自然への思いは、私たちの心にしっかりと残っています。その思いは、きっといつまでも多くの人々の心に生き続けることでしょう。
萱野茂先生のご冥福を心からお祈り申し上げます。
(平成18年5月22日)